高校 政経に役立つニュース解説

日々のニュースの中から、高校政経に役立ちそうなテーマを選び、分かりやすく解説します。これを読んで自分の意見が持てるようになりましょう。

北朝鮮、ミサイル再び経済水域に

北朝鮮は5日、同国西岸の黄州(ファンジュ)付近から弾道ミサイル3発を発射、いずれも北海道沖の日本の排他的経済水域に落下した。


まず、日本の安全保障の現状から確認しましょう。言うまでもなく日本は、日本国憲法第9条で平和主義を宣言しています。特に第2項では、戦力不保持、交戦権の否認など他国に類を見ない規定があります。額面通りに読めば、我が国は軍隊を持てないのです。


しかし、1950年の朝鮮戦争をきっかけに警察予備隊が発足し、現在の自衛隊があります。1951年のサンフランシスコ平和条約締結と同時に日米安全保障条約も締結されました。


しかし日本の安全保障は、現在も憲法自衛隊の矛盾を孕んだまま構築されています。


昨年末には安全保障法制が成立し、自衛隊の任務は増えましたが、矛盾は残ったままです。


この矛盾のしわ寄せをもろに受けているのが自衛隊員です。最も問題なのは、日本には軍法がなく自衛隊の防衛活動に対しても刑法が適用されることです。


万が一戦闘に巻き込まれて敵兵を殺害した場合、殺人罪で起訴され死刑になってしまうのです。正当防衛が成立するのは、あくまで平日の私たちと同じ基準です。


さて、北朝鮮のミサイルです。日本の安全保障の基礎は専守防衛ですから(一般の正当防衛にあたります)、北朝鮮がミサイルを発射はしない限り防衛行動はとれません。


ミサイル防衛システムがあるじゃないかと思われるかもしれませんが、今回のように、移動式の発射台や潜水艦から発射されると発射位置がつかみにくく、迎撃が間に合いません。


北朝鮮はそれを承知した上でミサイルを発射しているのです。中国の東シナ海での露骨な侵略行為も同じです。


北朝鮮、中国ともに独裁国家です。私たちとは違う理屈で行動します。そして自衛隊員は、憲法に手足を縛られたまま防衛活動をしなければなりません。


昨日、安倍首相と習近平国家主席との間で首脳会談が行われましたが、予想通り議論は平行線でした。


北朝鮮の一方的な軍事行動は、交渉を有利に進める目的もあるでしょう。


話し合いで解決するにしても、現状では日本は圧倒的に不利な立場で交渉せざるを得ません。


国家の最も重要な役割とは、国民の生命と財産を守ることです。日本の安全保障のあり方を、ここでもう一度、冷静に考え直してみる必要があるでしょう。