高校 政経に役立つニュース解説

日々のニュースの中から、高校政経に役立ちそうなテーマを選び、分かりやすく解説します。これを読んで自分の意見が持てるようになりましょう。

G20首脳会議開幕

 

まずは基礎知識から。G20は、2008年のリーマンショックをきっかけに始まりました。新興国の影響力が強まる中、先進国だけが集まるG7では問題解決ができないという考えに基づきます。


ちなみにG7(最初は6カ国)は第1次石油危機をきっかけに1975年に始まりました。


多様な国家が一堂に会するG20ですが、数が多い分利害の対立も大きく、実際には具体的な合意形成が難しいのが本当のところです。


今回も、世界経済の成長のために、財政・金融・構造改革を行なうという、総花的共同声明しか出せませんでした。イギリスのEU離脱南シナ海東シナ海など、当面最も重要と思われるテーマについてはあまり触れられていません。


現状ではG20そのものよりも、その合間に行われる個別の首脳会談のほうが注目されています。9月6日夜には日中首脳会談が行われる予定です。

米中、パリ協定同時批准

米中両政府は2016年9月3日、2020年以降の地球温暖化対策「パリ協定」を批准したと発表した。世界の温暖化ガスの約4割を占める二大排出国の批准で同協定は早期発効へ大きく前進した。

解説

地球温暖化対策に国際社会が本格的な取り組みを始めたのは、1992年にブラジルのリオデジャネイロで開催された国連環境開発会議(地球サミット)からです(1972年の国連人間環境会議としっかり区別して下さいね)。

ここで締結された気候変動枠組条約の進捗状況を確認するために開かれるようになったのがCOP(締約国会議)です。その3回目、COP3で採択されたのが京都議定書で、各国のCO2削減目標が決定しました。

しかしこの時温暖化ガスの削減を義務付けられたのは先進国だけで、発展途上国(中国、インド含む)には数値目標がありませんでした。その上最大排出国であるアメリカが離脱したため発効があやぶまれましたが、当初不参加だったロシアが2005年に参加したためなんとか発効にこぎつけました。

日本は1990年比6%削減を公約し、すでに達成しています。

今回のパリ協定はCOP21で採択されました。京都議定書との大きな違いは、アメリカと中国が批准したことです。色々な思惑があるにせよ大きな前進です。

ただ、ロシア、インド、日本はまだ批准しておらず、パリ協定はまだ発効していません。

なぜ日本は批准していないのでしょうか。

日本が目標を達成するためには、原発を再稼動させる必要があります。しかしそれは、現実的ではありません。日本はかなり苦しい状況にあります。

「領土」進展へ経済全面に 首相、プーチン氏軟化狙う

安倍首相は2日にロシアのウラジオストクプーチン大統領と会談します。安倍首相は現在経済的に苦境にあるロシアに経済援助をする一方で、北方領土問題を一気に進展させたいようです。


ところで、ロシア人の平均寿命の短さは先進国の中できわだっています。2013年で男性66歳、女性76歳。特に男性の短さが目立ちます。理由としては、アルコールの過剰摂取、結核などの感染症の蔓延、自殺や殺人の多さなどが挙げられています。さらに、高等教育を受けている人と、初等教育しか受けていない人との格差が驚くほど大きい。ソ連崩壊後の政治的混乱に加え、経済格差の影響がここでも暗い影を落としています。安倍首相はこの機にロシアの領土問題での大幅な譲歩を勝ち取りたいところです。なんだか人の弱みに付け込むみたいで良い気持ちはしませんが、これが外交というものでしょう。良い結果が出ることを期待しましょう。

ブラジル、景気後退続く 9月1日日経

ブラジル地理統計院が31日発表した2016年4〜6月期の国内総生産GDP)は、前年同月比で3.8%減となった。マイナス成長は9四半期連続。


解説

BRICSの経済減速が止ままりません。BRICSとは、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカのことで、豊富な人口と資源を活かして、世界経済を牽引する役割を期待されてきましたが、ここに来て低迷がめだっています。ブラジルはリオオリンピック景気が期待されましたが、政治的混乱やジカ熱の流行もあり、オリンピック開催前から景気後退が始まってしまいました。日本は1964年の東京オリンピックを契機に、東海道新幹線首都高速道路が開通し、オリンピック景気に沸きました。野良犬の捕獲や立ち小便の禁止なども行われたそうです。どちらも近頃見かけないですね。OECDに加盟して先進国の仲間入りをしたのもこの時です。しかし現在は、オリンピック開催が必ずしも経済成長には繋がらなくなっているようです。規模の拡大やテロ対策に経費がかかりすぎるからでしょうか。2020年の東京オリンピックはさてどうなるのでしょう。

欧州委員会、アップルに1.4兆円追徴をアイルランドに指示

EUの欧州委員会は30日、アイルランド政府が最大で130億ユーロ(約1兆4800億円)の違法な税制優遇をアップルに与えたとして、過去の優遇や利息を追徴課税で取り戻すよう同国に指示した。アイルランドは不服としてEU司法裁判所に提訴する構え。


解説

ヨーロッパは2度の世界大戦の戦場となって廃墟と化し、没落してしまいました。EUは、ヨーロッパが二度と戦争をしないように一つの国のようになろうという目的でつくられたものです。現在は共通通貨ユーロの導入など経済統合が完成し、さらに外交や安全保障、司法に至るまでの政治統合を目指している最中。すでに欧州中央銀行(ECB)、欧州委員会(行政機関)、欧州議会、欧州裁判所、そしてリスボン条約で欧州大統領も新設されました。EUの権限が強化されると一つの国のようなヨーロッパが近づきます。しかしそれは、ヨーロッパ各国の主権が失われることでもあります。イギリスはそれを嫌いEU離脱を決意しました。一つの国としてのEUは実現するのか。ヨーロッパ人の覚悟が問われています。

雇用拡大さえぬ消費 8月30日(火)日経夕刊

雇用は加熱しバブル経済の余韻が残る1990年代並みなのに、消費がさえない。7月の完全失業率は3.0%なのに7月の実質消費支出は前月より0.5%減った。雇用増がパートなど非正規や低賃金の仕事で目立つことも消費停滞の一因だ。


解説

みんな就職して収入があるのに、ちっともお金を使わないから、物が売れなくて景気が上向かないという記事。

一番の原因は、その仕事の約4割がパートなどの非正規雇用だということ。みんな将来が不安だから欲しい物を買わないで、少ない収入の中から一生懸命貯金してるんですね。

特に我慢しているのが婦人服で28.3%減。みんなユニクロとかで安い商品を買ってるようだ。きっと子育て世代のママだろうな。本当はまだまだお洒落したいだろうにね。景気回復にはただ就職できたから終わりではなく、非正規労働者の将来の不安を軽減する仕組みが必要。正社員の安定を守るために非正規が犠牲になっている現状は、結局社会全体のためになりません。ま、今の世の中、正社員も決して安泰ではありませんが。非正規雇用が男女ともじわじわ増加しているグラフが2015年のセンター試験に出題されました。